この記事では、
- 固定資産税評価額と売買金額が全然違うけど、なんで?
- 不動産の売買金額ってどうやって決まるの?
- 不動産の評価額ってそもそも何なの?
という人のために、固定資産税評価額と売買金額の違いと、どうやって金額が決まるのか解説します!
できる限り簡単に説明します
なぜ固定資産税評価額と売買価格が違うのか?
不動産には固定資産税評価額や相続税評価額など色んな評価額がありますが、実はその全ての評価額と売買金額は関係ありません!
例えば、固定資産税評価額で1,000万円の不動産だったとしても、実際にその不動産を売ろうとすると50万円にしかならないといったことも現実にあります。
えぇぇ!それじゃ評価額って何の意味があるの?
別の目的のものなんです。固定資産税評価額と売買金額の違いを簡単に説明します
固定資産税評価額は市町村が定めた金額
固定資産税評価額とは、都市計画税、固定資産税、不動産取得税、登録免許税の算定基準となる価格のことで、固定資産税課税台帳に記載されています。
土地と建物についてそれぞれ固定資産税評価額がありますが、国の定めた「固定資産評価基準」にもとづき、個別に固定資産税評価額を計算されています。
第五款 固定資産の評価及び価格の決定
引用:地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
(固定資産税に係る総務大臣の任務)
第三百八十八条 総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。この場合において、固定資産評価基準には、その細目に関する事項について道府県知事が定めなければならない旨を定めることができる。
固定資産評価基準:総務省「固定資産税の概要」の中に、土地と建物に関する固定資産税評価基準の資料があります。
あの・・全然簡単じゃないんだけど・・
私も漢字が多くて眠くなって・・
固定資産税評価額というのは、超簡単にいうと、
『税金徴収のために市町村が決めた不動産の金額』
ということです。それだけ覚えておけばOKです!
売買金額は自由価格
不動産の売買金額は、売主と買主間で定めた取引価格のことで、その価格設定は自由です!
これを契約自由の原則といい、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に決定できます。
契約は当事者の自由な意思に基づいて結ぶことができます。当事者間で結ばれた契約に対しては、国家は干渉せず、その内容を尊重しなければなりません。これを契約自由の原則といいます。「契約を結ぶかどうか」、結ぶとしても「誰と結ぶか」、「どのような契約内容にするか」について、当事者は自由に決めることができます。
引用:消費者庁、「(資料4)法務省説明資料」より
(契約の締結及び内容の自由)
引用:民法(明治二十九年法律第八十九号)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
いくらで売買してもいいってことなの?
そうです!お互いがよければ10円でも、100万円でも売買していいってことです
固定資産税評価額はあくまでも税金徴収のために国や市町村が決めた金額で、固定資産税評価額を目安に取引しなければならないという制限はありません。
そのため、売買金額と固定資産税評価額は全く無関係ということです。
売買金額はどうやって決まるのか?
固定資産税評価額と売買金額って関係ないとしたら、売買金額はどうやって決まるの?
お互いがこれならいいよってなった金額です
不動産屋さんが出してくれる査定額は?
極端な言い方すると、カンです
不動産の売買金額が決まる流れ
では、実際にどうやって売買金額が決まるのか、一般的な流れを簡単にご紹介します。
流れ① 不動産会社にて査定
所有している不動産を売ろうと不動産会社へ相談へ行くと、次のように査定が行われます。
すいません、この前相続したコツメ町の平屋を売りたいんですけど
承知しました。査定させていただきます
この土地で建物はボロボロだから500万円で売れたらいい方かなぁ
お待たせしました。もし時間かかってもよければ600万円程度でも売却可能かと思います
それでお願いします
不動産会社では、土地の評価額や建物の状況を考慮し、実際の取引価格も見ながらいくらなら売却できそうか検討を行います。
しかし、最終的にいくらで売却できるかどうかはそのときの状況や相手次第なので、売主の意向や担当者の勘で「えいやー!」と決められることも多いです。
他社さんの査定書を売主さまからもらった。分厚い査定書だけど中身が薄いんだよね…。「経験と勘による査定金額」に合わせるように査定システムの数字をイジる不動産査定は止めた方がいいと本気で思う!そもそも、取引事例比較に路線価を未加工で含めるのは悪意あり過ぎだぞー(# ゚Д゚)
— ゆめ部長@真っ直ぐ不動産仲介 (@yumebucho) December 4, 2020
流れ② 売れないから金額を下げる
最初に設定した価格で買い手が現れなければ、徐々に価格を下げて買主を探していきます。
600万円だと買い手がなかなか現れませんが、早めに売却希望でしたら少し下げてみますか?
うーん、500万円でお願いします
当初、売買金額は600万円の予定でしたが、500万円まで下がりました。
しかし、これで売れるかどうかは市場次第なのでわかりません。
流れ③ 売買金額の決定
売買希望金額を下げれば検討する人も増えてきます。
しかし、まだまだその価格で売れるかどうかはわかりません。
ちょうどコツメ町で土地を探していたんだよね。でも500万円じゃ高いなぁ
欲しい価格を提示いただければ、売主さんに提示してみます
うーん、450万円なら買いたいです
購入希望者から価格提示があれば、不動産会社は売主さんへ提示します。
450万円で買いたいという方が現れました。この価格でいかがですか?
うーーん、なかなか売れないし450万円でいいです
当初600万円で売ろうとしていましたが、結果的には450万円で売買成立となりました。
このように不動産は、参考になる評価額があったとしても、最終的な売買金額はそのときの状況や相手次第なので、いくらで売買できるかはわかりません。
状況によって売買金額は大きく変わる
不動産の価格って何でそんなに変わっちゃうの?
相場価格はあっても、結局は当事者次第だからです
不動産には先ほどの固定資産税評価額のような参考になる金額はあっても、お互いの状況によって売買金額は大きく変わります。
売買金額に影響を与えるのは次のようなものです。
①いつまでに売りたいのか
②土地・建物の状態
③住環境
④入居者はいるのか
価格影響① いつまでに売りたいのか
不動産を売りたいと考えても、その不動産を買いたい人がいなければ売買はできません。
もし高い金額で売却希望であれば検討する人も少なくなり、どうしてもその不動産を欲しいという人が現れない限り長期間売れないこともよくあります。
すぐに手放したければその分価格を下げなければならないので、売却までに待てる時間によって金額は大きく変わります。
価格影響② 土地・建物の状態
固定資産税評価額などの不動産の評価額は、その土地や建物が標準的な状態であることを前提に価格を算定します。
しかし、建物がボロボロで修繕しなければとても住めない状態であったり、そもそも建物として使えない状態であれば、その分値段を下げなければ買いたいという人は現れません。
価格影響③ 住環境
近隣に嫌悪施設があったり、住環境がよくなければ、どんなに評価が不動産であっても買いたいという人は現れません。
埼玉県のある地域でずっと売れない巨大なマンション群がある
— Irohabook (@irohabook) May 28, 2022
それは子どもや遊び場を中心に設計しているせい
年中叫び声が聞こえる住環境は地獄ということを不動産会社はいまだに理解できてないのが日本…#騒音 #近所迷惑
価格影響④ 入居者はいるのか
入居者の有無によっても金額は変わります。
例えばマンションの1室を売ろうとしたときでも、入居者がいる状態であれば買っても住むことはできず、収益物件としてでしか売却はできません(追い出すこともできますが、引っ越し代などの費用がかかります)。
実需(自分が住む目的で購入)であれば高く売れたとしても、収益物件となれば投資家しか買えず、利回りなど違った指標を基に売買金額の相場は決まってきます。
うーん、確かに売買金額って簡単に決まらないね
だから評価額と売買金額は違うんです
不動産に関する価格の種類
最後に不動産の評価額をまとめて説明しますね
不動産の評価額と売買金額は別物ですが、売買金額を決めるにあたって、不動産の評価額も重要な要素となります。
そこで、不動産に関する評価額の種類を簡単に説明します。
土地(更地)の価格
①実勢価格
実勢価格とは、実際の取引が成立する価格のことで、売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合う価格をいいます。
②公示地価
公示価格とは、毎年3月下旬に国土交通省から公表される土地取引の基準となる価格のことです。
全国の標準値(約2.6万地点)の1月1日時点における更地における1㎡当たりの価格です。
③基準地価
公示地価と類似していますが、毎年9月下旬に公表される7月1日時点の基準地(約2.2万地点)の価格です。
公示地価との違いは、基準地価は各都道府県が調査の主体となり、都市計画区域外や林地も基準値となっているところで、公示価格の補完的な役割も持っています。
④相続税評価額
土地の相続税や贈与税の算定基準となる価格で、毎年7月初旬に1月1日時点における価格を国税庁から公表されます。
公示地価の80%が目安となっています。
⑤固定資産税評価額
都市計画税・固定資産税や、不動産取得税、登録免許税の算定基準となる価格で、各市町村によって決定されます。
公示地価の70%が目安で、1月1日の評価額ですが、評価額の見直しは3年に1回行われます。
建物の価格
建物の評価にもいろいろなやり方がありますが、土地に比べると大雑把な評価になります。
(A)固定資産税評価額
建物のみの評価としては一番細かく見ている評価額です。
建物部分の新築価格(再建築費用)に対して、築年数に応じて減額したものを家屋の価格として評価を行います。
具体的には、新築を建てた際に、総務大臣が定めた「家屋の固定資産評価基準(総務省)」に基づいて、屋根・基礎・外壁柱・壁体・内壁・天井・床・建具など一つ一つの材料や寸法、構造、立地など事細かに評価し、それらを合算して新築時の評価額を算出します。
そして、その建物の経過年数に応じて、先ほどの評価額を減額して固定資産評価額とします。
この評価基準では、評価額(再建築費)を相場の70%水準として決められています。
(B)実勢価格(厳密には存在しません)
当事者間で実際に取引される価格のことです。
基本的に土地と建物はセットで販売され、当事者間の何らかの考え方で土地と建物の価格は按分されます。
例えば土地と建物を固定資産税評価額で按分するなどして決定されます。
(C)再調達価格による評価(積算評価)
イメージとしては建物の固定資産税評価額を、もっと簡単に計算したものです。
固定資産税評価額は、建物の内部までしっかり調査して当初の評価額を出しますが、建物構造ごとの標準的な再建築価格を基準単価として、その再調達価格に延床面積をかけて算定されます。
中古の場合には、法定耐用年に対する残りの存耐用年数の割合で算定します。
固定資産税評価額の建物の価格はゼロにはなりませんが、積算評価法における建物の価格は、耐用年数に達するとゼロになります。
評価額=建物の延床面積×再調達価格×(残耐用年数÷法定耐用年数)
鉄筋コンクリート(RC)…20万円/㎡
重量鉄骨…18万円/㎡
木造…15万円/㎡
軽量鉄骨…13万円/㎡
土地+建物の価格
積算評価法
積算評価法は、土地と建物を別々に評価し、その評価額を合算するという評価方法です。
具体的には、土地の価格は前述した②公示地価や④相続税評価額などの価格を用い、建物の価格は(C)再調達価格による評価額を用います。
詳細な算定方法は別の記事にて紹介します。
収益還元法
収益還元法とは不動産の収益性に着目した評価方法です。
この評価方法では、その不動産から将来的に生み出される価値を現在価値に割り引いて不動産価格を決定します。
また、収益還元法には直接還元法とDCF法の二種類があります。
詳細な算定方法は別の記事にて紹介します。
取引事例比較法
過去の取引事例を参考にして評価する方法です。
対象不動産と条件が近い取引事例から必要に応じて対象不動産の事情補正や時点修正を行い、地域的要因及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考慮して対象不動産の価格を求める方法です。
なんか色々と価格ってあるんだねぇ
それぞれ使用目的が違うからですが、わかりにくいですよね
まとめ
本記事では、不動産の評価額と売買金額がなぜ違うのか解説しました。
要点をまとめると次のとおりです。
結局、いくら固定資産税評価額が高いからって、高く売れるとは限らないってことか
そういうことです!