簿記検定といえば、会社の経理さんが持っているイメージでしょうか?
簿記は普段の生活ではほぼ触れることがないのですが、不動産投資にとってはとても大事なものです。
不動産投資をやるなら最初に十分に理解すべき資格といえます。
本記事では簿記検定についての詳細と、不動産投資との関わりについてご紹介します。
簿記って難しそう・・。
私は商業高校卒業なので、高校生の時に簿記を勉強したよ。足し算と引き算が基本なので、数学が苦手な方でも大丈夫ですよ。
資格の概要
簿記とは何か
日常生活のお金を管理するために用いるのが家計簿ですが、簿記はその企業版のことで、家計簿よりも詳細にお金を管理していきます。
1つ1つのお金の流れを細かく帳簿に記載し、財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)というものを作成していきます。
簿記の内容は、企業規模の大小や業種を問わずに共通する内容で、経営活動を記録・計算・整理して、経営成績や財務状態を明らかにします。
簿記を理解することによって、企業の経理事務に必要な知識を理解でき、さらに財務諸表を読む力や経営管理や分析をする基礎知識を学べます。
簿記検定の種類
日本で行われている簿記検定は、「日商簿記」、「全商簿記」、「全経簿記」の3種類があります。
ざっくり分けると、以下のような違いがあります。
不動産投資を行うほとんどの方は社会人かと思いますので、ここでは日商簿記について書いていきます。
私が高校生の時に取得したのが全商簿記です。たろーが不動産投資を始める前に勉強したのは日商簿記です。会社で取得を推奨されているのも、日商簿記が多いです。
簿記の取得方法(日商簿記)
試験内容
日商簿記には、1級・2級・3級・初級の4つの級があります。
それぞれのレベルで試験内容は異なっており、簡単に分けると以下のようになります。
1級 | 公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門(商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算) |
---|---|
2級 | 法人の財務諸表作成や経営管理ができるレベル(商業簿記、工業簿記) |
3級 | 個人事業の青色申告に役立つレベル(商業簿記) |
初級 | 簿記の仕組みや基本用語を理解する入門レベル |
主題範囲については、以下の日本商工会議所のHPに記載されています。
日本商工会議所:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/exam-list
試験方法
筆記試験。
電卓の持ち込みが可能です。
受験資格
学歴・年齢・性別・国籍による制限はありません。
2級や1級からの受験や、1・2級、2・3級の併願受験もできます。
開催時期
1級 年2回(6月第2日曜日、11月第3日曜日)
2級・3級 年3回(6月第2日曜日、11月第3日曜日、2月第4日曜日)
受験料
1級:7,850円
2級:4,720円
3級:2,850円
合格率
1級:10%前後
2級:25%前後
3級:45%前後
※ 試験範囲が改定されると合格率は大きく変動します、
おすすめ参考書
実際に使用してわかりやすかった参考書をご紹介します。
3級
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級 総仕上げ問題集
2級
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 商業簿記 テキスト&問題集 第6版
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記2級 工業簿記 テキスト&問題集
私自身は簿記2級まで取得しましたが、最初は他のテキストで勉強していましたが、連結決算の方法等どうしても理解できない範囲があり、結局こちらのテキスト購入し、勉強し直しました。
痒い所に手が届くように丁寧に説明してくれているので、試験を受ける方にはぜひお勧めです。
パブロフ簿記:https://pboki.com/
簿記と不動産投資との関係
資格がないとできないこと
簿記の資格には独占業務はありません。
日商簿記1級を取得すれば税理士の受験資格を得られますが、簿記以外でも税理士の受験資格は得られます。
そのため、簿記の資格がないとできないということはありません。
あれ?不動産投資と簿記って直接は関係しないの?
資格がないから困るといったことはないよ。でも、不動産投資やるなら簿記を十分に理解していないと、後々困ります。
取得するメリット
もし不動産投資をするのであれば必ず最初に勉強すべき内容です。
個人事業としてやるのであれば簿記3級を、法人としてやるのであれば簿記2級を取得できるレベルまで必ず勉強した方が良いです。
知識さえあればわざわざ資格として取得しなくても特に弊害はありませんが、簿記に関しては資格として取得できるレベルまで勉強した方が結果的に大変役に立ちます。
『ユダヤ人大富豪の教え』で有名な本田健さんも、お金のIQを高めるためには「税金、投資、会社法、ビジネス、交渉術などが必要」、ビジネス成功するために必要な要素として「法務税務やキャッシュフローに詳しくなること」をあげられています。
不動産投資は投資といいつつも実態はビジネスなので、会計や税金に関する基礎知識としてしっかり学ぶべき内容です。
具体的にどこで役に立つのかご紹介していきます。
簿記のメリット① 自分で確定申告ができ、お金の節約が可能
不動産投資を始めると、毎年税務署へ確定申告書の提出が必要になります。
確定申告書の作成については税理士に丸投げもできますが、普通に頼むと年間で20万円~30万円と大変痛い出費です。
サラリーマン以外の収入を得るために不動産投資を始めたのに、物件数が少ないとその儲けの全てを税理士に渡すようなものです。
いきなり大規模に物件を購入できる高所得サラリーマンは別として、もし低所得で不動産投資をやるなら不動産投資開始直後は、少しでも不要な出費は節約して、物件購入へお金を回すべきです。
個人事業として不動産投資をやるなら
簿記3級の知識があれば、個人事業の決算書や、確定申告書も自分で作成できます。
個人事業の確定申告書はシンプルで簡単に作成できるので、税理士を挟まなくても難なくできます。
発生した取引整理(仕訳)がわからないときにも、税務署へ問い合わせると、1件1件丁寧に教えてもらえるので、税理士がいなくても困ることはありません。
(参考リンク)税務署 帳簿の付け方
法人として不動産投資をやるなら
簿記2級の知識があれば、法人の確定申告に必要な財務諸表の作成ができます。
ただし、自分で作成できるとはいえ、法人の確定申告書はかなりマニアックで様式も複雑なので、申告書の作成のみは税理士の助けを借りると良いです。
私のやり方としては、全ての取引の仕訳は自分で行い、最終的な仕訳のチェックと確定申告書の作成のみを税理士へ依頼し、数万円で受けてもらっています。
最初から法人でやったの?
最初は個人事業としてスタートして、戸建て4戸目から法人を立ち上げました。なので、現在も個人事業と法人のどちらも毎年確定申告書を提出してます。法人の一期目はたろーが頑張って自分で確定申告書を作っていましたが、煩雑過ぎて嫌になってました。確定申告書を見ると眠くなってきます・・。
簿記のメリット② 最適な決算書を作成できる
「経理関係はレシートをまとめて全部税理士に任せればいい」と思う方もいると思いますが、税理士は自分の立場があるのでグレーゾーンの内容は、全て安全側に無難な処理をします。
また、税理士は税務署目線で安全な決算書を作ってくれますが、必ずしもそれは銀行目線で最適な決算書とはいえません。
もし銀行融資を使った不動産投資をやりたいのであれば、銀行の格付け(スコアリング)を意識した決算書作りが必要で、特に低属性の不動産投資では、いかに決算書を作るかが最重要課題です。
銀行相手に最適な決算書を作るためには、最低限簿記の知識が必要であり、もし税理士に任せるとしても作成された内容にコメントできないと話になりません。
どんな物件を買うのか、どんな運営をするのかももちろん重要ですが、銀行があなたを評価する際に用いるのは確定申告書です。
銀行がどうやってあなたの事業を評価しているのか、そして高い評価を得るために何ができるのかを理解するためにも簿記は大変役に立ちます。
簿記ってすごいね
高校の授業でやったときには、面倒くさいし嫌いでしたが、実は事業をするには大事でした。商業高校って実用的です。
簿記のメリット③ 銀行融資に必要な書類を自分で準備できる
銀行融資を申し込むと、購入物件単体の収支計算だけでなく、事業全体の資金繰り表や残高試算表、収支見通しの提出を求められます。
全て税理士に任せて作ってもらうこともできますが、中身を理解できていないと説明すらできません。
あなたが提出した資料で融資をするかどうか判断されるので、どういった資料を準備し、どんな内容があればわかりやすいのか考えるときにも簿記で学んだ内容は役に立ちます。
簿記のメリット④ 経営者としての評価が高くなる
銀行に融資を申し込むと初回は渉外担当または融資担当との面談があります。
また、日本政策金融公庫へ申し込むと、その度必ず面談を行います。
銀行の場合は詳細は資料をということで面談もあいさつ程度だったりしますが、公庫の場合には形式上面談が必須なので、提出資料について細かく質問をされます。
自分で作っていれば何も困ることはありませんが、もし税理士にお任せで中身を理解していないと経営者としての信頼がなくなります。
銀行の格付け評価(スコアリング)では、決算書の数値を使った定量評価以外に、経営者の能力や経営計画力といった項目も評価されています。
銀行から決算書の内容を聞かれたときに、「税理士に聞いてくれ」と言うようであれば、銀行の定性的評価は最低と思った方が良いです。
取得するデメリット
商業簿記は勉強し身につけた知識をそのまま不動産投資に使えるため無駄になることはありません。
しかし、簿記2級以上を取得するために必要になる工業簿記は不動産投資には全く関係ありません。
工業簿記はこういう経理処理もあるのかと参考にはなりますが、不動産投資には役に立たず、資格のためのだけの勉強になるので若干時間の無駄は否めません(商業簿記に比べると工業簿記は簡単ですが・・)。
不動産投資のために取得した方が良いのか
銀行融資を使って不動産投資をやりたい方であれば日商簿記2級を取得することをおススメします。
直接簿記の資格が必要になる場面はありませんが、正しい理解をして、正しく使えることを確認するためにも簿記検定合格できるレベルまでしっかり勉強した方が良いです。
日商簿記2級までのレベルであれば工業簿記を除き、ほとんどの内容をそのまま日々の経理業務や銀行提出書類の作成といった様々な場面で使うことになります。
不動産投資というビジネスで成功するためには、その基礎として簿記を勉強しておくと大変役に立ちます。
簿記の資格試験で合格するためには最低でも1ヶ月間は勉強漬けになりますが、そのメリットは大いにある資格といえます。
ぜひ不動産投資を開始するときには、並行して簿記も勉強しましょう。
おススメ度
資格は取らなくてもいいが、簿記の勉強は不動産投資に必須です!