こんにちは。大家のぶたどんです
賃貸の浄化槽問題について解説します。
やっと理想の部屋を見つけたと思ったら、設備に『浄化槽』と書いてある物件に出会ったことはありませんか?
浄化槽とは下水と比べてどう違うのでしょうか?
浄化槽ってそもそも何なの?
そこで本記事では、賃貸物件で浄化槽だった場合のメリットやデメリットについて、大家が解説します。
浄化槽について
まずは浄化槽とは何なのか解説します。
1.浄化槽とは
浄化槽とは、下水に接続されていない住宅に設置されている汚水処理設備のことです。
浄化槽で処理された水は、道路の側溝などを通り、最終的には川へ放流されています。
上の写真が浄化槽の外観写真です(右奥にいる人の大きさと比べるとかなり大きいです!)。
浄化槽は一般的に地中に埋め込まれているので、完成後は下の写真のような見た目になっています(上の写真の浄化槽を地中に埋め込んだ後です)。
浄化槽の仕組み
浄化槽は大きく分けて次の2種類があります。
- 単独処理浄化槽:し尿だけを処理
- 合併処理浄化槽:し尿+台所や風呂・せんたくなどの生活雑排水も併せて処理
浄化槽法及び建築規準法の改正により、平成13年4月から原則、「単独処理浄化槽」の設置が禁止され、現在は「合併処理浄化槽」しか設置できなくなりましたが、それ以前に建設された建物であれば「単独処理浄化槽」の場合もあります(「みなし浄化槽」といわれます)。
また、家庭用合併処理浄化槽にも性能や処理方法で様々なタイプがあります。例えば、次のようなものです。
- 嫌気ろ床接触ばっ気方式
- 担体流動・生物ろ過方式
家庭用として最も普及しているのが、『嫌気ろ床接触ばっ気方式』というものです。
嫌気ろ床接触ばっ気方式の処理方法
更に眠くなる話だから、本当に読み飛ばしていいですよ・・。タイトルを見た瞬間に眠くなってきた・・
嫌気ろ床接触ばっ気方式(けんきろしょうせっしょくばっきほうしき)では、まず「嫌気ろ床槽」という場所に汚水が流れ込みます(次の図の一番左側)。
「嫌気ろ床槽」では、ろ材によって汚水中の固形物を取り除き、酸素を必要としない「嫌気性微生物」によって汚水中の有機物を分解し、浄化します。
第1室で浄化した水が第2室に移って、同様の手順で更に浄化します。
次に、「接触ばっ気槽」へ浄化された汚水が流れ込みます(次の図の左から3番目の槽)。
外部に設置した送風機(ブロワ)から、槽の底部に細かい気泡状の空気を送り込み、接触材の表面に付着した好気性微生物(酸素を好む微生物)の膜により、汚水中の有機物をさらに浄化します。
液体に空気中の成分(酸素等)を吹き込むことを「ばっ気」といい、「接触材」を用いていることから、「接触ばっ気槽」といいます。
そして、「接触ばっ気槽」で浄化された水が「沈殿槽」へ流れ込みます。
「沈殿槽」では浄化した処理水に含まれる固形物を沈殿させ、きれいな上澄み水を最後の消毒槽へと送ります。
最後に「消毒槽」では、塩素消毒をして、衛生的に安全な水として放流します。
ただの箱に見えて、なんだかすごい仕組みだね!浄化槽の賃貸物件に住めば、こんな凄いものがあるから、なんだかお得な気がしてきたよ
浄化槽と下水の違い
ここから浄化槽と下水の違いを説明します!
浄化槽は家に設置された汚水処理設備ですが、浄化槽がある家は下水の家と何が違うのでしょうか。
浄化槽と下水の違いは次のとおりです。
違い① 下水使用料が不要
一番大きな違いが、浄化槽を使用している家庭では下水使用料が不要ということです。
例えば、東京都(23区)では次にような下水料金がかかります。
1ヶ月の平均水道使用量は、東京水道局の行った令和2年度生活用水実態調査によると、1人世帯で8.1㎥、2人世帯だと14.9㎥と言われています。
平均的な2人世帯(使用量14.9㎥)の場合の下水料金は、次のように計算し、1,450円となります。
0~8m³ 560円
9~14.9m³ 110円×6.9m³=759円
小計 1,319円(=560+759)
下水料金 1,450円(=1,319×1.10)
浄化槽の賃貸物件に住めば、この下水料金は無料です。
え!?それならめっちゃお得だね!
まだ続きがあるから、これだけで判断しちゃだめですよ
違い② 浄化槽の維持管理、清掃が必要
浄化槽は、浄化槽法という法律によって、定期的な保守点検や清掃が義務付けられています。
(浄化槽管理者の義務)
引用:浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号)
第十条 浄化槽管理者は、環境省令で定めるところにより、毎年一回(環境省令で定める場合にあつては、環境省令で定める回数)、浄化槽の保守点検及び浄化槽の清掃をしなければならない。ただし、第十一条の二第一項の規定による使用の休止の届出に係る浄化槽(使用が再開されたものを除く。)については、この限りでない。
また、もっとも普及している嫌気ろ床接触ばつ気方式の場合には、保守点検は4カ月に1回、清掃は1年に1回以上の実施が必要です(保守点検や清掃の回数は、浄化槽の処理方式や処理対象人数(浄化槽の処理能力)によって異なります。
なお、詳細な内容は、「浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号)」及び「環境省関係浄化槽法施行規則(昭和五十九年厚生省令第十七号)」に記載されています)。
え!?どうやって管理していけばいいの?
浄化槽の保守点検と清掃については、地域の浄化槽清掃業許可業者しかできないので、住んでいる地域で、
「〇〇市 浄化槽清掃許可業者」
と検索すると市町村のホームページで業者の一覧表で出てきます。
その業者に浄化槽の種類を伝えると(わかられなければ業者が直接見に来てくれます)、保守点検や清掃料金を教えてもらえます。
浄化槽の保守点検・清掃の金額
金額は地域によって異なっていますが、北関東の戸建てで保守点検が3,000円/回程度、清掃が10,000円/回程度でした(アパート等の浄化槽の規模が大きくなると、もっと高額です)。
戸建てであれば、清掃が年1回+保守点検年3回で、料金は20,000円/年くらいです(業者によっては、清掃時に保守点検を兼ねて、保守点検料は年2回分で済んだりもします)。
浄化槽ブロワーの電気代
浄化槽の電気代は、戸建てであればフジクリーン EcoMac40という一般的な浄化槽ブロワーで計算すると、500円/月くらいです。
浄化槽の電気代
フジクリーン EcoMac40の消費電力:32W
1カ月の使用電力:23kW(=32W×24時間×30日)
1ヶ月の電気料金:460円(=23kW×20円/kW)
下水料金が年間で17,000円(≒1,450円×12カ月)くらいなので、電気代も含めると浄化槽の方が少々高くなりそうです。
うーん。悩ましい!
違い③ 洗剤に注意が必要
浄化槽は、微生物の働きで汚水を浄化しているので、塩素系の漂白剤などを大量に流すと、浄化槽内の微生物が死んでしまいます。
そのため、漂白剤使用時には大量の水で薄めたり、洗剤の種類を中性のものにするなど気を付ける必要があります。
専用の洗剤を使用すれば安心です。
微生物が頑張って働いてくれてるから、大事にしなきゃね
アパートで浄化槽のメリット、デメリット
メリット・デメリットを解説します
メリット 下水使用料が不要で、水道代が安い
アパートの場合、浄化槽の保守点検や清掃は大家が実施しています。
そのため、同じ条件で「下水」の賃貸物件と比べると、「浄化槽」の賃貸物件の方が下水使用料の分だけお得です。
ただし、物件によっては、「浄化槽点検費用」等の名目で家賃や管理費以外のお金をとられることもあるので、支払総額でお得かどうか注意してください。
デメリット 悪臭や虫が発生することもある
浄化槽や管理方法次第ですが、夏場は虫が発生することも多く、稀に浄化槽の臭いが気になることもあります。
害虫対策として夏場は殺虫プレートを設置したり、臭いが気になるときには清掃業者に問題ないのか確認してもらい対処するので、問題が継続することはほぼありません。
すぐ解決しますよ
貸家(戸建て)で浄化槽のメリット、デメリット
貸家(戸建て)で浄化槽の場合について、メリット・デメリットを解説します
メリット 水道使用量の多い家庭だとお得(かもしれない)
下水使用料は、水道の使用量によって高くなります。
一方で、浄化槽の保守点検や清掃費は、浄化槽の大きさによって固定料金の場合が多く、水道の使用量が多い場合でも料金は変わりません。
世帯人数の多い家庭だと、浄化槽の方がお得になる場合もあります(ただし、家が大きくなると浄化槽の容量も大きくなって清掃費が高くなります)。
デメリット① 下水よりも若干お金がかかる
貸家(戸建て賃貸)の場合、浄化槽の点検や保守費用は入居者(借主)負担となる場合が多いです。
また、浄化槽に設置されているブロワーの電気代も入居者(借主)負担となります(アパートだと共用部の電源を使用しているので、電気代は大家負担)。
戸建てに設置されている浄化槽であれば、電気代も含めて年間で25,000円~30,000円程度です。
下水使用料が2人世帯で17,000円/年くらい、4人世帯で28,000円/年くらいなので、世帯数の多い家庭だと浄化槽の方がお得なケースもありますが、少ない世帯だと若干高くなります。
デメリット② 悪臭や虫が発生することもある
アパートの浄化槽と同様に、管理方法によっては夏場の虫や臭いが気になることもあります。
戸建ての大家もしていますが、入居者から浄化槽に関するクレームを受けたことは一度もなく、アパートと同様に適切な管理をしていれば問題になることは少ないと思います。
賃貸物件なら浄化槽と下水どちらがよいか?
なんとなく、アパートなら浄化槽も魅力的だなぁ。
戸建てなら面倒だし下水がいいな
結論はその通りです・・。
アパートの場合
アパートの場合には、家賃や管理費以外に「浄化槽管理費」等の名目でお金がかからないのであれば、浄化槽の方が下水使用料分だけ安いのでお得です。
管理は全て大家の責任なので、万が一害虫の発生などの問題が起こったらすぐに管理会社か大家へ連絡して解決してもらいましょう。
浄化槽のアパートに住んでいても、自分で管理をしていなければ下水の物件と違いは感じないと思います。
貸家(戸建て)の場合
貸家(戸建て)の場合には、多くの場合に入居者が浄化槽の管理・清掃を行うので、一緒に住む家族が多ければ浄化槽の方が、少ない場合には下水の方がお得です。
ただし、お得とはいいつつも浄化槽と下水で年間で数千円程度の差しかないので、実際どちらでもそんなに変わりません。
大きな違いとしては年に1回浄化槽の清掃でバキュームカーが来て清掃を行い、4カ月に1回点検も行うことですが、清掃と点検のいずれも立会せずにやってもらうことも可能です。
そのため、結論としては浄化槽かどうかはあまり気にせず、家賃やその他の条件で判断した方が良いです。
もし清掃業者と管理委託契約を結んだり、何も手間をかけたくないという方は下水の賃貸物件を選んだ方が良いかもしれません。
なんだかどっちでも良くなってきた。あまり気にすることないのかな
浄化槽に関するQA
浄化槽に関するよくある質問と回答です。
Q1.なぜ大家さんは最初から下水にしないの?
建物の建設時に下水配管が来ていればほとんどの物件で下水へ接続しています。
しかし、下水配管のないエリアであれば必然的に建設当初は浄化槽となります。
建物の完成後に近隣の道路で下水が整備されることもありますが、浄化槽から下水へ切り替えるにも数十万円の工事費がかかるため、その工事費と維持管理費を天秤にかけて下水へ切り替えるかかどうか判断されます。
大家としては下水の方が一切手間がかからず、故障等のリスクもないので大変ありがたいのですが、工事費用の問題で切替できないことがほとんどです。
Q2.浄化槽の清掃費用は大家負担にならないの?
賃貸借契約の条件は自由なので、大家と話し合いの上、清掃や管理費を大家負担にすることもできます。
大家負担にできるかどうかは、相手次第ですが・・。
Q3.浄化槽が壊れたら誰の負担になるの?
浄化槽は設備に該当するため、修繕が必要となった場合には原則大家(貸主)の負担です。
Q4.浄化槽の管理・清掃費用は業者によって違うの?
業者によって金額は異なるので、何社か見積もりをとってみると良いです。
ただし、地域によっては業者間で内密に談合して、どこの業者に聞いても同じ金額になっていることもあります。
数年前は安い業者があったのですが、あるときから地域一律同じ料金になってしまい、業者へ聞いたら、とんでもないことを暴露しました。やっていることは明らかに独占禁止法の違反ですが・・・
Q5.ブロワーがうるさいけど、異状ない?
浄化槽ブロワーは、近づくと「ブィーーーン」と音が聞こえますが、そんなにうるさいものではありません。
騒音レベルに音がしているときはブロワーの異常なので、大家へ交換するよう連絡しましょう。
管理している戸建てで古くなってかなりうるさいブロワーがあり、急いで交換したのですが、入居者さんからは
「ブロワーの音ってそんなもんかなと気にしていなかった」
と言われました。
使ったことないと案外正常な音はわからないので気にしならないのかもしれません。
通常は低い音です
まとめ
本記事では、賃貸住宅の浄化槽について解説しました。
要点は以下のとおりです。
お部屋探し中の方には『賃貸の仲介手数料が安いおすすめランキング!部屋探しに最適な不動産屋とは』の記事もぜひご参考にしてみてください。