自主管理を始めた時に一番不安だったのが、退去立会です。
募集~契約に関しては不動産屋さんに任せて実施できても、自主管理だと退去立会は自分でやらないといけないのではと、すごく不安でした。
退去立会って何をやるんだろう。
入居者ともトラブルになったら嫌だなぁ。
でも管理委託費はもったいないし・・。
自主管理最大の難関とも思える退去立会。どうしたらよいのでしょうか。
本記事では、自主管理している物件の退去立会はどうしたらいいのか、自分で実施する方法も含めてご紹介します。
退去立会とは
退去立会とは、入居者がこれまで住んでいた部屋を退去して引越しする際に、部屋の状態を確認し、大家(貸主)と入居者(借主)のそれぞれの修繕負担範囲を確認するための行為です。
通常、荷物を全て片付けた後の部屋を明渡しをする日に行われ、大家側の代理人として管理会社や不動産会社の方と入居者本人が直接立ち会い、一カ所ずつその場で確認を行います。
退去立会で確認された修繕箇所について、経年劣化や通常の使用により生じた損傷部分を除く入居者の負担すべき金額を計算し、精算することで退去完了となります。
管理会社がいる場合の退去立会
物件の管理を不動産会社へ委託している場合、入居が管理会社へ退去の連絡を行い、管理会社から大家へ退去予定などの連絡が入ります。
そして、退去立会で物件の状態確認や、その後の精算金額の算定・請求なども全て管理会社で行い、大家はその確認を行うだけです。
つまり、大家としてはほぼ何もしなくてもOKということです。
自主管理の退去立会方法
管理会社へ任せれば楽だよね。
やっぱり自分じゃ無理なのかな。
自主管理の場合、管理会社がいるときのように完全にお任せとはいきません。
しかし、管理会社がいなかったとしても自分でやらない方法もあります。
方法① 入居者と契約してくれた不動産会社へ任せる
一番簡単な方法が、入居者を見つけ契約を行ってくれた不動産会社へ退去立会をお願いすることです。
自主管理にしていても、何のトラブルもなく入居者と全く連絡をとらないでいると、入居者はまず契約をした不動産会社へ退去の連絡をします(入居者は誰が管理しているか基本知りません)。
そして、不動産会社から大家へ「○○さんの退去で連絡きました」と伝えてくれます。
そのときに、思い切って
退去立会ってお願いできませんか?
と聞いてみると、ほとんどの不動産会社は(渋々)OKしてくれます。
もし入居者から自分の連絡が来てしまった場合もこちらから不動産会社へ連絡し、
○○の契約でお世話になったぶたどんです。
実は住んでいた方で退去になりまして・・
退去立会を御社にお願いできませんか?
と言ってみればOKをもらえます。
しかし、不動産会社にとっては無報酬のボランティアになってしまうので、どちらの場合も、
ハウスクリーニングはそのまま御社にお願いしようと思いますので。
この一言を添えるだけで、相手への(少しの)メリットも生まれるため、ほぼ全ての会社が受けてくれます(今までこれで断られたことはありません!)。
ハウスクリーニングについては退去時に入居者の負担となるように賃貸借契約書で定めておけば、大家として負担もなくそのまま不動産会社へ任せることができます。
そのまま修繕があったら任せてもいいですし、最低限相手になんらかのメリットがある形で依頼すると良いです。
方法② 近くの不動産会社へお願いする
ジモティーなど自分で入居者を見つけた場合や、契約してくれた不動産会社の都合が合わないとなった場合には、近くの不動産会社へお願いする方法もあります。
突然すいません。
近くのアパートで退去がありまして。
御社に退去立会ってお願いできませんか?
全く会ったことのない不動産会社のときは直接お店を訪ねて聞いてみると、怪しまれながらもOKしてもらえます。
もちろんタダでやってくれるわけはなく、代行手数料という名目でいくらか支払ったり、ハウスクリーニングをお願いするなど、相手になんらかのメリットがある条件でです。
不動産会社にとって、退去立会いは日常茶飯事なので、特に苦も無く鮮やかにこなしてくれます。
方法③ 自分で立ち会う
不動産会社に任せずに、自分で退去立会から精算まで行うこともできます。
最初はできるかどうか不安だと思いますが、思い切って一度経験してみると、「こんなもんかぁ」と意外に簡単で拍子抜けしてしまいます。
具体的な流れは以下で紹介します。
退去立会の流れ
自分で退去立会できるっていうけど・・。
どうやってやったらいいのかなぁ。
自分の引越しも経験したことないし不安だなぁ。
自分で退去立会をするとどういう流れになるのか、入居者とのやり取りも含めて紹介していきます。
1 退去の連絡を受ける
こんにちは!
転勤になったので引越しします!
来月の下旬頃に退去予定です。
あぁ・・、退去ですか。承知しました。
最後に退去立会が必要なので、
退去立会日はいつにしましょうか。
まず、入居者から引越しの連絡を受けます。
通常の賃貸契約だと、一ヶ月前までの連絡となっているので、もし一ヶ月以内で退去のときには、日数に関係なく一ヶ月分の家賃が発生することを伝えましょう。
また、短期解約違約金がある場合や、退去時のハウスクリーニングを契約で定めているときは、その費用が必ず必要になることを伝えましょう。
2 退去立会日の調整
3月30日の12時から退去立会でお願いします!
承知しました。
退去立会してから精算になりますが、最低でも
解約違約金で4万円と、ハウスクリーニングで3万円、
あと修繕箇所があればその負担もあるのでお願いします。
退去予定日が近くなったら退去立会の日時を確定させます。
このときに既にわかっている費用があれば事前に伝えておきましょう。
ハウスクリーニングについては、くらしのマーケットで実際に業者に頼んだときに必要な金額を確認し、その相場費用で設定しておけば大丈夫です。
ただし、くらしのマーケットには相場よりも大幅に安い方や高い方もいるので、中間あたりの方で設定するともめることはないと思います。
3 退去立会の準備
退去立会時に必要なことは、物件の状態確認と、その負担範囲の決定です。
洩れなくチェックし最後は著面で残しておくと、万が一訴訟となったときや、保証会社へ立替請求する際の大事な証拠書類になります。
そのため、以下のようなチェックリストを準備すると良いです。
こちらの退去時チェックシートは、不動産会社が使っていたものを参考に、自分でエクセルファイルに作り直したものです。
退去時チェックシートの書式をダウンロードできるようにしたので、改造して使ってみてください。
ポイントは、事前にどこ見るのか予めしっかりと考えて、全て記載しておくことです。
ちなみに、上記シートは自分の使いやすいように簡易的な内容にしているため、細かく厳密にやりたい方は、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の中に、チェックシートの記載例があるので、そちらを参考に作ると完璧だと思います。
参考:国土交通省原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
また、どこが入居者負担で大家負担なのか予めしっかり勉強する必要があります。
原状回復については、いわゆる『東京ルール』が一般的に適応されており、東京都のトラブル防止ガイドラインを読んで、その通りに精算していけば間違いないです。
契約書の中で原状回復について細かく記載してくれる不動産会社もありますので、そのときはガイドラインを参考にしながら契約書に従って精算を行います(不当な契約条件は無効ですが)。
参考:東京都賃貸住宅トラブル防止ガイドライン
4 退去立会当日
はじめまして。
今日でお会いするの最後ですが、よろしく!
よろしくお願いします!
では、一緒に確認をお願いします。
当日は、事前に作成したチェックシートと、賃貸トラブル防止ガイドラインを一緒に持っていきましょう。
そして、チェックシートに従って入居者と一カ所ずつ確認を行い、どこが大家負担でどこが入居者負担になるのかチェックシートに記載しましょう。
全ての項目を確認し終わったら入居者の方に、チェックシートの内容を確認いただき、最後に本人の署名をもらいます。
もし負担範囲で不明な個所や疑問点が出た場合には、賃貸トラブル防止ガイドラインを見て、どのような理由で入居者負担になるのかその場で説明しましょう。
もし敷金をもらっておらず、解約違約金やハウスクリーニング費用等確実に支払いがある場合には、可能な限り退去立会日に確定している金額を支払ってもらうようにし、それ以外の修繕箇所の負担分のみ後日振込にすると良いです。
5 修繕金額を計算する
どうやって見積りって作ればいいの・・。
チェックシートで修繕が必要となった項目に対して、それぞれの金額を計算します。
クロスやクッションフロアなどについては、㎡単価×施工面積となるので、どの面を張り替えるのかで施工面積を計算します。
慣れてくると、天井高さえ事前に測定しておけば、間取り図から施工面積を算出することもできますが、初めての時は、実際にメジャーを使って測ってみると良いです。
単価についてはネットで相場価格を調べられるので、高すぎない標準単価を使えば大丈夫です。
直し方や金額がさっぱりわからないときには、業者さんに実際に見積もりを依頼してみるか、くらしのマーケットや家仲間コムを使ってみると良いです。
くらしのマーケットは型にはまった内容の工事(ハウスクリーニングや雨樋などの分かりやすい修繕等)だと金額が最初から明示されているので、業者に見積もり依頼する前に価格を調べることができます。
クロスの張替えも業者さんに見積り依頼することもできます。
家仲間コムだと、通常の見積もりが必要な工事について、現場の写真を載せてそれを見た業者さんから見積りをもらえるので内容が不明な場合はこちらのサイト利用も便利かなと思います。
6 負担金額を計算する
全体の修繕費用を見積りできたら、大家と入居者の負担割合を計算します。
計算方法は、修繕箇所の耐用年数や修繕場所によっても変わります。
耐用年数はものによって異なり、クロスだと6年、洗面化粧台だと15年などと決まっているので、住んでいた経過年数に従って負担割合を設定します。
例えば、入居期間が2年でクロス(耐用年数6年)の張替えが必要となった場合は、入居者の負担は2/6=0.33となります。
また、修繕箇所の負担単位も場所によって異なります。
入居者の負担する範囲は、可能な限り毀損部分に限定したものとなりますが、例えばクロスだと一カ所傷ついてしまったものを直そうとすると、その壁一面を張り替えないといけないので、壁一面が負担単位となります。
耐用年数や負担範囲の考え方や具体的な計算方法は、全て東京都賃貸住宅トラブル防止ガイドラインに記載されているので、読んだことない方は一度印刷してじっくり読んでみると良いです。
7 原状回復費用の回収
入居者の負担すべき金額が計算出来たら入居者の引越し先住所へ請求書を発送します。
普通の方であれば支払ってくれますが、稀に支払わずに逃げようとしたり、お金がないので払えないという方もいます。
回収が難しいなと思ったら、保証会社へ立替請求し、あとの回収は保証会社へ任せることもできます。
このときに大事なのが、立会時に作ったチェックシートの入居者本人の署名です。
保証会社によっては、入居者の了承がないと立替できないという会社もあるため、最低限負担箇所や負担範囲を書面で残すことが大事です(保証会社によっては、金額まで含めて入居者の了承がないとダメという会社もあります。保証会社次第で対応は全く異なります)。
また、入居者が破損してしまった箇所を、入居者もしくは大家の加入している火災保険で修繕することもできます。
入居時に、入居者の破損・汚損を補償してもらえる賃貸用の火災保険に加入してもらえば、退去時の入居者の負担も減り、まさにwin-winです。
もし保険も使えず保証会社の立替限度を超えて、自分でどうにか回収するしかないとなったら、訴訟して頑張って回収するしかありません。
少額訴訟については現在実施中なので、無事に完了できたら別の記事にしたいと思います。
まとめ
この記事では、自主管理の物件の退去立会はどうやったらいいのか、退去立ち合いの方法について紹介しました。
意外に簡単なので、時間がある方は自分で退去立会をしてみてもいいかと思います。