こんにちは。大家のぶたどんです。
更新料について業界裏話まで解説します。
賃貸物件に入居すると、なぜか2年に1回『更新料』という名目で家賃以外に請求されます。
月極駐車場を借りた際にも、1年に1回更新料を請求されたり、そもそも更新料がなかったり、契約する場所や相手によってバラバラです。
更新料って何なの?家賃以外に払いたくないんだけど、どうしたらいいの?
そこで本記事では、更新料とは何なのか、誰の利益になっているものなのか等、更新料の背景まで解説いたします。
更新料の種類について
更新料といっても、実は様々なものがあります。
賃貸物件入居中にかかる更新料は、一般的に以下の3つあります。
①賃貸借契約の更新料
賃貸借契約書で定められた更新料のことです。
私の住んでいるエリアでは家賃1カ月分の更新料となることが多いですが、地域によっては家賃0.5カ月分だったり、逆にもっと高額のケースもあります。
また、更新料ではなく、『更新事務手数料』といった名目のものもあります。
②保証委託契約の更新料
入居時に保証会社と契約した際に発生する継続保証料(更新料)です。
これは、保証会社の種類、契約プランによっても異なっており、1年1回の支払いとなるものや、初回限りでそれ以降の支払いがないプランもあります。
③火災保険の更新料
入居時に家財保険・費用保険として加入する少額短期保険の保険料(更新料)のことです。
賃貸契約に合わせて2年に1回支払いするのが一般的ですが、保険会社によっては1年に1回支払うプランがあるなど、保険会社によって様々です。
まとめて払っていたからよくわからなかったけど、色々あったんだね
更新料の種類ごとに詳細を解説していきますね。
賃貸借契約の更新料について
更新料って何で払わないといけないのかわからないよ!そもそも更新料何のためにあるの?
なぜ賃貸借契約に更新料があるのか、その疑問について解説していきます。
なぜ更新料を払わないといけないの?
賃貸借契約に定めれた更新料に法的根拠はありません。
更新料はあくまでも当事者間(大家と入居者)での約束事として定めたものであり、そもそも更新料をとるかどうかも自由です。
じゃ更新料は何のためにあるの?
一言でいうと、更新料は大家か仲介業者の利益のためです。
更新料については最高裁でも以下のような判例があります。
更新料に関する最高裁判例
更新料は,期間が満了し,賃貸借契約を更新する際に,賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。これがいかなる性質を有するかは,賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情,更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し,具体的事実関係に即して判断されるべきであるが(最高裁昭和58年(オ)第1289号同59年4月20日第二小法廷判決・民集38巻6号610頁参照),更新料は,賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。
最高裁判例、平成22年2月24日、更新料返還等請求本訴,更新料請求反訴,保証債務履行請求事件
(中略)
賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。
え?どういうこと?
漢字が多くて眠くなってきた・・・
要するに、更新料は賃貸人(大家)の儲けの一部で、更新料と家賃を合わせて本当の家賃ということです。また、契約書に更新料が記載されていて、その額が高額すぎなければ妥当ということです。
上記のように、最高裁でも更新料の存在は認められています。
いくらだと高額なのかについては明確な基準はありませんが、最高裁では以下のような判例です。
本件条項は本件契約書に一義的かつ明確に記載されているところ,その内容は,更新料の額を賃料の2か月分とし,本件賃貸借契約が更新される期間を1年間とするものであって,上記特段の事情が存するとはいえず,これを消費者契約法10条により無効とすることはできない。
最高裁判例、平成22年2月24日、更新料返還等請求本訴,更新料請求反訴,保証債務履行請求事件
あくまでも一例ですが、この裁判では『1年毎・2カ月分の更新料』は妥当と判断されています。
2年更新だと4カ月分!?更新料高すぎでしょ!
つまり、一般的な『2年毎・1カ月分の更新料』で、賃貸借契約書に具体的に書かれていれば妥当な水準と判断されます。
(裏話)更新料は誰の利益?
上記最高裁の判例を見ると、『賃貸人の事業の収益の一部』と言われていますが、実態は大家と仲介業者の利益です。
地域によっても変わってくると思いますが、私の住んでいるエリアでは一般的に『2年毎・1カ月分の更新料』として定めますが、そのうち『0.5カ月分』は仲介業者の利益で、残りを大家がもらいます。
また、業者によっては『コンサル料』や『更新事務手数料』という名目で、更新料全額仲介業者の取り分となることもあります。
え?大家さんがもらっているわけじゃないの?
実はそうなんです・・。力関係の問題もあると思いますが。
私個人としては、更新料が退去のきっかけになる点と、そもそも私自身更新料が嫌いな点で、更新料に関する大家の取り分をゼロにして募集をお願いしています。
大家の取り分がゼロでも、仲介業者の利益分(手数料)が必要になるので、多くの場合、更新料を0.5カ月分として募集されます。
最近では、更新料をゼロとしても良いという仲介業者もいるため、その場合に限って更新料ゼロの物件として募集されます。
全国の更新料相場
更新料に関しては地域によって事情が異なります。
過去、国土交通省が行った更新料に関する調査結果(全国各地の更新料割合と更新料の額の平均値)は以下のとおりです。
割合(%) | 平均(月) | |
---|---|---|
北海道 | 28.5 | 0.1 |
宮城 | 0.2 | 0.5 |
東京 | 65.0 | 1.0 |
神奈川 | 90.1 | 0.8 |
埼玉 | 61.6 | 0.5 |
千葉 | 82.9 | 1.0 |
長野 | 34.3 | 0.5 |
富山 | 17.8 | 0.5 |
愛知 | 40.6 | 0.5 |
京都 | 55.1 | 1.4 |
大阪 | 0 | – |
兵庫 | 0 | – |
広島 | 19.1 | 0.2 |
愛媛 | 13.2 | 0.5 |
福岡 | 23.3 | 0.5 |
沖縄 | 40.4 | 0.5 |
上記のように更新料をとるかどうか、更新料の金額も地域によって様々です。
関東圏では更新料1カ月分が一般的ですが、大阪や兵庫では更新料がありません(その代わり、敷引金といって、返還される敷金が徐々に減っていく別の名目があります)。
同じ関西圏でも、京都では更新料が高く、地域差がかなりあります。
更新料を払わないとどうなるの?
賃貸契約書に具体的に記載された更新料であれば、払わなければ大家から(保証会社へ加入している場合には保証会社から)請求され、最悪の場合には支払に関する訴訟や契約解除で退去させられます。
もし合意更新せずに法定更新とした場合でも同様に更新料は請求されます。
合意更新とは・・貸主と借主双方の合意をもって契約を更新すること
法定更新とは・・貸主と借主の契約の更新に関する同意が契約終了までになされなかった場合、これまでの契約内容と同じ条件(従前の契約と同一の契約条件)で契約を更新すること
最高裁の判決の趣旨を鑑みた場合、2年更新の賃貸借で、更新料の額が賃料の額の1か月分程度の特約であれば、その特約が不合理なものとは到底考えられず、当事者間にそれを合意更新の場合にのみ支払うというような特別な事情や取り決めでもない限り、法定更新の場合にも有効な特約として、借主に対し、その支払いの請求をすることができると解される。なぜならば、法定更新の場合であっても、借主は、貸主から「正当の事由」を具備した通知がなされない限り、更新が拒絶されることはなく(借地借家法第26条第1項、第28条)そのほとんどの場合、合意更新の場合と同じように賃貸借の目的物を継続使用することができるので、法定更新の場合の更新料についても、少なくとも賃貸借契約を継続することができるそれなりの対価性を有するものと認めることができるからである。
不動産流通推進センター、平成23年の更新料裁判における最高裁の判決の趣旨と法定更新の場合の更新料請求との関係
更新料1カ月だけで訴訟されちゃうの?
やろうと思えば請求に関する訴訟+強制執行で無理やり回収もできますが、かなり面倒なので、「訴訟するよ?」、「強制執行になるよ?」、「契約解除だよ?」と脅して、訴訟はせずになんとか払ってもらいます。
更新料を払わないで済む方法
賃貸借契約書に更新料を具体的に記載して契約した場合には、異常な金額でない限りは絶対に払わなければなりません。
先ほどの最高裁の判例で『1年毎・2カ月』の更新料は問題ないとあったので、かなり高額設定でない限り拒否することは難しそうです。
そのため、更新料を払わないためには賃貸借契約の締結前に大家と交渉するしかありません。
では、具体的な方法を紹介します。
方法① 内見時に大家と交渉する
一番簡単な方法は、賃貸物件の内見時に入居申込をする前に『更新料の減額はできないか』と交渉することです。
もし仲介業者と内見しているときは、その旨を大家さんに伝えてもらい、返事を待つことになります。
交渉のポイントは、次の通りです!
大家さんとしては、退去があると修繕費用や広告費の支払い、そして空室期間中の家賃の損失もあります。
そのため、できる限り早く契約・入居してくれ、しかも長期間入居してくれる方であれば多少の家賃や更新料の減額は受け入れやすいです。
もちろん長期入居を約束して退去されると大家さんとしては損失でしかないので、短期解約違約金の設定を要求される可能性は高いです。
もし長期間入居を前提とできるのであれば、自ら違約金の設定(例えば、4年以内の退去で賃料1カ月等)まで提案すると、本気度を感じて応じてもらえるかもしれません。
方法② 契約更新時に大家と交渉する
一度契約をしてしまうと、次回の契約更新までは更新料を変更できません。
そのため、契約更新時に『更新料を減額できないか』交渉すると良いです。
交渉のポイントは、先ほどと同じく、長期入居を前提として大家さんと取引することです。
一番効果的なのは、『更新料減額できないなら契約更新せずに退去する』と伝えることですが、もし強気の大家さんで断られたら本当に退去するしかないので、あまりおススメはできません。
退去するよって言われたらどうするの?
良い方だったら、減額してでも引き留めようと土下座します。借金まみれの投資家大家は、退去が恐いんです・・
方法③ 更新料ゼロの物件を探す
更新料が一般的にあるエリアでも物件や契約の方法によっては、『更新料がゼロ』ということもあります。
仲介業者を挟むと、大家さんとしては仲介業者へ更新料を支払わなければならず更新料をゼロにしにくいのですが、業者によっては更新料ゼロでも募集を受けてくれるケースもあります。
更新料ゼロの物件や扱っている業者を探すか、仲介業者を挟まずに直接大家と契約すれば、更新料はゼロにしやすいです。
更新料ゼロで受けてくれる仲介業者の例
・(株)SIRE ECHOES:全国の賃貸物件をオーナーから直接募集を受けている会社。オーナー次第で更新料ゼロ物件も多数あり
【大家さんと直接契約できるサイト】
私は全物件で更新料の大家取り分ゼロです。
(体験談)更新料の減額交渉の失敗例
月極駐車場の契約例ですが、減額交渉に失敗した体験談を紹介します。
所有物件の近隣で入居者用に駐車場を借りることにしました。
契約書は郵送でのやり取りでしたが、駐車場を管理している不動産業者から送られてきた契約書を見ると突然『更新料毎年0.5カ月』との記載がありました。
更新料を払うの嫌だなぁと思い管理している不動産業者へ相談しました。
更新料なんて聞いてませんよ!これゼロにしてもらえませんか?
毎月の賃料に更新料分を上乗せするならいいですけど。嫌なら契約しなくて結構です
自分が近くの物件を所有していて、この駐車場を借りるしかないとわかっていたこともあり、減額交渉は失敗しました・・。
もし交渉するのであれば、他に選択肢があるなど、自分が選べる立場で交渉に臨んだ方がよいです。
足元を見られたら間違いなく負けます。
保証委託契約の更新料について
次に、保証委託契約の更新料について解説します。
賃貸物件へ入居するためには、最近では保証人を不要とし、保証会社を利用するのが一般的です。
では、保証会社の保証料については、更新料をゼロとできるのでしょうか?
結論から言うと、減額不可です。払わないと後がヤバいです。
なぜ保証会社の更新料を払わないといけないの?
保証会社の保証料は、保証会社や利用する商品によって金額や支払い方法も完全にバラバラです。
同じ保証会社を利用する場合であっても、ある不動産会社で申し込むと更新料はゼロでも、別の不動産会社で申し込みと更新料があったりもします。
なぜそんなことが起こるのかというと、同じ保証会社であっても、補償内容が異なる複数の商品を用意していることもあり、大家さんや不動産会社がどの商品を選ぶかによって保証料も変わります(大手仲介会社では、独自の商品を利用していることもあります)。
もし継続的に更新料を支払うプランを選ばれていれば、毎年保証料の支払いは必須です。
入居者がこういう商品使いたいって提案すればいいの?
その仲介業者や大家さん次第ですが、基本的に難しいです
保証会社を利用するためには、不動産会社と保証会社との間で事前に代理店契約を行います。
代理店契約をしていない保証会社は利用できず、どの保証会社を利用するのかも、大家さんと不動産会社で事前に決めているので、入居者が選択することはほぼできません。
なぜ大家さんが保証会社を決めるのかというと、保証会社によって補償内容が異なっているため、できる限り滞納や夜逃げ時等の回収不能のリスクが低くなる商品を選択したいという思いがあります。
入居者が『この会社のこの商品が安いから使いたい』と思っても、大家さんとしては『補償内容が悪いから無理』と思えばまず利用できません。
一般的に『賃貸人が指定する保証会社利用』が入居条件となっており、入居者に選択権はありません。
(裏話)保証会社の更新料は誰の利益?
大手仲介業者などの例外を除き、全て保証会社の利益で、大家さんへは1円も入りません。
保証会社の継続保証料(更新料)については、全て商品として決まっており、基本的にそのまま保証会社へ渡ります。
例外的に、大手仲介業者などの独自商品を作っている場合には、一部代理店(仲介業者)の利益になっているものもありますが、大家さんへはもちろん何もありません。
保証会社の更新料を払わないとどうなるの?
もし保証会社の継続保証料(更新料)を支払わない場合、保証会社から徹底的に請求を受け、次回引越し時には保証会社の審査が大変厳しくなります。
保証会社の継続保証料(更新料)については、代理店で手続きをしている場合を除き、その請求や回収は全て保証会社で行うので、大家さんは一切かかわりません。
万が一、支払われない場合にも保証会社から入居者へ請求行為があるだけで、払われていないことすら大家さんは知りません。
もし滞納するとペナルティ料金がかかったり、保証会社に滞納履歴が残るので、次回別の物件へ引越そうとした際に保証会社の審査で否認される可能性が高いくなります。
保証会社によっては滞納情報を共有しているので、別の保証会社を利用する場合でも否認されて入居できないリスクがあります。
なんだか怖いね・・
保証会社の更新料を支払わないで済む方法
払わないで済む方法なんてあるの?
一度、契約したら保証会社の更新料を支払わずに済む方法はありません。
そのため、『継続保証料(更新料)のない商品』を利用できる不動産会社や物件を探すしかありません。
どこの商品を利用するのかは大家さんと不動産会社で決めているので、同じ不動産会社でも別の物件であれば違う商品を利用することもできます。
もし内見した方から『別の保証会社を使いたい』と言われたら、使えない理由(過去のトラブル)を疑い、その時点で基本お断りします。
火災保険の更新料について
最後に、火災保険の更新料について解説します。
一般的に賃貸物件の入居時には少額短期保険の加入が必須となり、万が一に自分自身を守るために加入しています。
利用している保険会社によっては2年に1回もしくは1年に1回支払いがありますが、払わないとどうなるのでしょうか?
払わなくてもどうにかなることもあります。でも万が一の時にとんでもない請求を受けます
火災保険の更新料をなぜ払わないいけないの?
火災保険については、更新料というよりも、契約した期間の保険料そのものです。
一般的に、入居期間中の火災保険の加入は入居条件とされており、加入しないと契約違反となります。
火災保険の更新料を支払わないとどうなるの?
火災保険の加入を入居条件として賃貸借契約を締結していれば、賃貸借契約の違反となります。
火災保険の未加入のみで訴訟や強制執行をすることは現実的ではありませんが、払わないという意思表示をすれば賃貸借契約の更新自体を拒絶されることもありえます。
また、火災保険の未加入期間があれば、火事などのトラブルを起こした場合に保険金請求できず、全額自己負担で賠償請求を受けるリスクもあります。
火災保険の更新料を支払わないで済む方法
火災保険未加入で良いという不動産会社と大家さんを探し、自己リスクで背負う覚悟があれば払わないということもできます。
決しておススメはしませんが・・・。
火災保険を払わない人もいるの?
実際にいました!加入を必須にしたのに入らず、保険加入していれば補償された事故でしたが、加入していなかったことで10万円弱の請求(入居者負担)になりました!
まとめ
本記事では、更新料について解説しました。
要点は以下のとおりです。
全てに共通していることですが、契約前であれば交渉も可能ですが、契約後は基本的に諦めて支払うしかありません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。